夏休み最終日。混雑を避けたつもりで、安曇野へ遊びに出かける。
碌山美術館の壁には、荻原守衛の言葉が刻まれている。
「LOVE IS ART. STRUGGLE IS BEAUTY.」
「愛は芸術なり、相剋は美なり」
この言葉は彫刻作品だけでなく、建築の細部に残された設計者と職人の格闘をも表しているように思える。
碌山美術館にはこれまで何度か訪れているが、今回は建物の細部のつくり込みに目が留まった。彫刻に挑むかのような各部の納まりを、これまでは見過ごしていたようである。
入口の扉には、人物をかたどった取手や、キツツキの姿をした金物が取り付けられている。取手は彫刻家・笹村草家人によるものだという。彫刻家の造形感覚と、鋳造をはじめとする技術が、建築金物にまで及んでいるのだろう。金物だけでなく、グズベリーハウスの扉や外壁の木部にも、木彫に挑むような濃密さがある。
今井兼次の設計した碌山館を核に、笹村草家人をはじめとする彫刻家たちの造形が建築の細部にまで広がっている。碌山美術館という場所を、これまでとは少し違った角度から見たような気がした。
いつの間にか敷地内には展示棟が増え、荻原守衛と同時代を生きた作家たちの作品も数多く収蔵されていた。守衛を中心に芸術家たちが集った新宿中村屋と、相馬愛蔵・黒光夫妻が果たした芸術支援者としての役割の大きさも、改めて感じる。
谷口吉郎設計の藤村記念館にしても、この時代の小さな建築からは、今日とは異なる設計者と職人の気迫が伝わってくる。
職場へ戻る前に本物の建築に触れることができ、ことのほか有意義な夏休み最終日となった。
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