2026-04-09

全国に点在する赤城神社のなかでも、三夜沢(みよさわ)の赤城神社は中心的な存在である。その神社からほど近く、神社とも縁の深い「旧阿久沢家住宅」が山里にひっそりと佇む。住宅としての役割は終えたものの、国の重要文化財として、17世紀末(1600年代)に建てられた中世以来の民家形式を留める、往時の姿を今に伝えている。農家といっても名主を務めた阿久沢家の本家にあたり、座敷もしつらえた立派な造りである。

その庭先に、樹齢100年とも伝わる桜の巨木が立っている。カスミザクラという山野に自生する種類で、華やかさはソメイヨシノなどに譲るものの、素朴でどこか凛とした佇まいは、開花期にその存在感を強く主張する。

夜、撮影する機会を得た。漆黒の闇に巨木の姿が浮かび上がる。夜の闇に邪魔者は姿を潜めているが、ライトアップの光源は不可欠である一方、画角に制限を与える。三脚を使用し、撮影位置を探す。夜間撮影には不慣れなため、ペンライトがないと各ダイヤルの設定も読み取れない。失敗を重ね、車に戻り室内灯で確認する。

大きく捉えた母屋が、完全に脇役となっている。かつての主は、どのようにこの花を眺めたのであろうか。周囲を回りながら、同時に時の流れの静かな歩みを噛み締める。