桜の開花を告げる報道が流れるたび、心がざわつく四月。
なかでも想像を掻き立てられてきたのが、高遠城址公園の桜である。

時代物を好む身としては、ここが武田勝頼ゆかりの地であり、また流罪となった江島の地でもあることから、以前より関心を抱いていた。古城に咲く桜とはいかなるものか――その一点を確かめるべく、満開の時期に訪れた。

茅野から杖突峠を越えて高遠へ向かう。峠を下り、人家が現れ始める頃には、タカトオコヒガンザクラが山里の随所で満開を迎えていた。その光景は強く記憶に刻まれた。

やがて臨時駐車場からシャトルバスで公園へ入ると、満開の桜が空を覆っていた。見慣れたソメイヨシノよりもやや濃い、可憐な薄紅色である。

しかし、ここは本来戦国期の山城である。空堀に往時の気配は感じられるものの、石垣や建造物は乏しく、城郭の痕跡を視覚的に捉えることは容易ではない。
歴史を求めて訪れたはずが、眼前にあるのは圧倒的な桜の量であり、その存在がかえって城の姿を覆い隠しているようにも感じられた。

撮影を進めるほどに、桜のあでやかさと、写し取るべき対象の定まらなさとの間で迷いが生じる。帰宅後に現像してみても、その印象は変わらない。桜は確かに美しいが、「高遠城」を写し得たかと問われれば、なお課題が残る。

次は、もう少し異なる季節に訪れてみたい。桜に覆われないこの地であれば、また別のかたちで歴史の輪郭が見えてくるかもしれない。