八高線、変革の鼓動。HB-E220系初乗りと享保の遺構を訪ねて

 かつての主役、キハ110系をあっという間に駆逐した感のある八高線。高崎の車両基地には6両のキハ110系が連結されたまま留置されており、遠からず廃車回送されるものと思われる。  今日は新型車両「HB-E220系」の初乗り。寄居から高崎まで乗車し、新車の匂いを味わうことにした。

 本数の少ない八高線ゆえ、走行シーンの撮影はあきらめ、今回は小川町にある「吉田家住宅」での昼食を旅の目的とした。JR両毛線、高崎線、秩父鉄道、東武東上線を乗り継いで東武竹沢駅へ。そこから2kmほど歩き、目的地に到達した。  吉田家住宅は国指定重要文化財で、享保6年(1721年)築と伝わる埼玉県内最古の民家だ。驚くべきは、ここがいわば「動態保存」の状態にあること。囲炉裏には火が入り、食事も提供されている。  縁もゆかりもない山里だが、これも八高線が取り持つ縁だろう。

囲炉裏端で日本酒を一合、そして田楽、焼き鳥、野菜天ぷら付きの蕎麦を頂く。帰路は東上線、八高線、両毛線とした。帰宅しても服から燻煙の匂いがなかなか消えないが、それもまた、休日の一人時間を楽しんだ証だ。

 さて、HB-E220系。その名が示す通り、ディーゼルエンジンを電気モーターでアシストするハイブリッド方式で、蓄電池も搭載している。そのためか、客室に巨大な機器室が鎮座し、窮屈さは否めない。地方線区用の2両固定編成とはいえ、インテリアは機能一辺倒で味気なく、鉄道旅の情緒を求めるものではない。まるで「動く倉庫」か「住宅建築」のようだ。

 料金精算システムも、いまだ性善説に頼るワンマン方式。不正乗車の管理は大変だろう。利用者の多くは通勤通学の定期客ゆえ取りこぼしは少ないのだろうが、そもそも高崎から高麗川まで全線を乗り通すのは、私のような趣味人くらいかもしれない。  窓が小さいのも特徴だ。秩父鉄道の賑やかな車内と比べるとその差は歴然としている。

また、ホームの高さが線区によってまちまちなため、ドアのステップ段差も解消されておらず、バリアフリー化への課題も残る。

 八高線で進められてきた新しい信号システムの実験成果は、今後、小海線で実用化されるという。あちらは観光路線としての側面も強いため、このHB-E220系の無機質な仕様が似合うのか、少し気がかりではある。  とはいえ、静粛性や起動時の加速など、新世代車両ならではの長所も確かにある。倉賀野〜高崎間では、電車並みの爆走を見せてくれた。    地方交通線は今、非電化化を含めたハード面の変革期を迎えている。新幹線の整備が在来線の利益を吸い上げている現状を鑑みれば、その利益を少しでもローカル線の還元してほしいと願うのは、一利用者の身勝手な考えだろうか。