2026-08-27(画像はホンダーロゴ)

車の法定点検のため、代車としてホンダのN-VAN e:を一日使用した。

EVをまとまった時間運転するのはよい機会だった。走り始めてまず感じたのは、当然ながらエンジン音がないことである。ただし、車内がことさらに静かというわけではない。ロードノイズはかなり盛大に聞こえた。これはEVの問題というより、遮音性を必要最小限に抑えたN-VANという商用車の性格によるものだろう。

エンジン音が消えたことで、これまで隠れていた音が目立つようになったともいえる。ただし、アクセルを踏み込んでもエンジン音の高鳴りは聞こえない。変速ショックも当然なく、ひたすら滑らかに速度だけが上がっていく。前回の代車はガソリンエンジンのN-VANだったが、重量配分の違いやタイヤの影響だろうか、今回のほうが乗り心地は乗用車寄りに思えた。

返却する頃には、バッテリー残量の低下を知らせる表示が出ていた。ガソリン車ならば給油所に立ち寄り、数分で補給して再び走り出せる。しかしEVは、充電設備があっても回復には相応の時間を要する。この違いは、実際に使ってみると想像以上に大きかった。

300km程度の航続距離を掲げる軽EVも増えている。ただ、問題は満充電で何km走れるかだけではない。使い切ったあと、どこで、どのくらいの時間をかけて回復できるかまで含めて考える必要がある。 一日の走行距離と経路が決まり、仕事を終えれば必ず車庫へ戻る商用車なら、EVは使いやすいだろう。日中に所定の距離を走っても、夜間に充電し、翌朝また満充電で出発するというルーチンワークが成立すればよい。

軽EVも、地方の日常的な買い物など、短距離に限定した利用には向いていると思う。地方ではガソリンスタンドが減り、私自身も不便を感じることが増えた。自宅車庫に非接触型の充電設備が設置され、帰宅して所定の位置に停めるだけで充電できるようになれば、日常の足としてはガソリン車より便利になる可能性もある。

一方、冬の山間部で渋滞や立ち往生に巻き込まれた場合は心配である。低温による航続距離の低下に暖房の電力消費が重なれば、残量はそのまま暖を取れる時間に関係してくる。ガソリン車にも燃料切れの危険はあるが、携行や補給のしやすさには、まだ差があるように思う。

鉄道でも、架線や変電設備の維持が負担となる区間では、蓄電池車など車両側にエネルギーを持たせた自立走行が注目されている。自動車なら自宅や事業所、鉄道なら車両基地や主要駅をエネルギーの拠点とし、必要な区間を自力で走る。

すべての場所に供給設備を張り巡らせるのではなく、限られた拠点で補給する考え方である。 ただし、自立走行といっても、エネルギーまで自給しているわけではない。

EVは商用電力に依存する。私は一応、原子力発電には反対の立場なので、電源構成を考えずに商用電力への依存を増やすことには微妙な思いもある。電気が何によってつくられているのかを考えず、EVだから環境に良いと単純に評価することはできない。 車両や蓄電池の製造、充電設備の整備、使用後の電池の処理まで含めれば、EVがすべてを解決するとは思えない。

補助金を前提にしなければ価格や普及が成り立たない状態が長く続くことも、健全とは言い難い。

現在乗っている車は今月、6年で10万kmに達した。年平均にすると約1万7,000kmである。県外の山間部まで足を延ばしての撮影行では、実用上400km程度を不安なく走れなければ困る。山間部では充電場所も限られ、低温や高低差の影響もある。現在の使い方では、まだEVへの乗り換えは難しい。

もっとも、これから仕事を離れ、年齢とともに一日の走行距離も減っていくだろう。長距離を運転できなくなれば、軽EVでも用が足りるようになる。そのことには、いささか寂しさも感じる。自分と車の寿命とのチキンレース、というところかもしれない。

行動範囲を一挙に狭めるのではなく、一日の移動距離を減らし、出かける回数を増やすのが当面は現実的だろう。地方鉄道は運行密度が低く、一日現地に粘っても撮影効率はよくない。それならば、同じ場所へ朝、昼、夕、夜と時間を変えて出かけるほうが、鉄道と沿線の暮らしを記録するには適している。

一度の遠出で多くを回収する撮り方から、近い場所を季節や時間を変えて繰り返し訪ねる撮り方へ。これは行動範囲の縮小というより、写真との付き合い方を変えることなのかもしれない。

今回の代車では、EVを環境政策やカタログ上の数字ではなく、まず一台の自動車として確かめることができた。N-VAN e:には、用途が合えば明確な利点がある。しかし、現在の私の使い方にはまだ合わない。

今の車を整備しながら使い続け、次の買い替え時に、自分の行動範囲とその時点の技術を見て判断する。今のところは、それが最も現実的な結論である。