2026-06-25

以前から気になっていた沢入駅の紫陽花を観にわたらせ渓谷鐵道に乗って出かけた。非常に運行本数の少ない路線である。撮影効率からしたら自動車のほうが機動力はあるのだが、ディーゼルカーに揺られた時間を含めカメラに納めたいとも思うのだ。

前橋駅、朝、通勤とは違う方向に桐生に向かう。まだたくさんの高校生が沿線の学校へ向かっている。若い人たちの声が車内を支配する。

桐生駅の乗り換えは少々ややこしい。ホームはそのままつながっているのに、切符を買うには一度一階へ降りなければならない。慣れてしまえば車内でフリー切符への変更もできるのだが、便利なICカードに慣れた身には少々戸惑う。もっとも、地方鉄道の厳しい経営事情を考えれば、そう簡単に設備投資もできないのだろう。

こちらの車内は打って変わって静かなものだった。老夫婦二組と自分だけ。途中から男性二名と女性一名。ひたすらディーゼルエンジンの鼓動が伝わってくるだけだ。

定刻沢入駅に着く。紫陽花はあるものの公園のように整備されたものではないので、その数は期待したほどではない。ただし梅雨空、少し霧がかかった周囲の山に囲まれた静寂の空間はここまで足を運んだことを後悔させない。

乗ってきた車両を撮影した後は乗って帰る列車を待つだけだ。一時間二十分もの間紫陽花を撮ったりホームの古い待合室でぼんやり時の過ぎるのを眺めたりしながら帰路に乗る列車(ただし一両編成)を待つ。

そろそろ時間になったのでホームに出て待ち構える。但し見通しの利かないカーブからいきなり出てくるので少しまごつく。乗り遅れたらまた一時間以上待つことになるのでさっさと乗り込む。上下列車の交換時間はわずか四分。その間に撮影も乗車も済ませなければならない。

平野部の線路と異なり、短い直線と曲線をひたすらつなぎ合わせた線形は山岳路線らしい。煉瓦積みのトンネルも残されている。沿線の山林の木の枝が垂れて車両にあたる。文字通りタイムスリップしたような感覚になる。

やがて大間々の駅に着くと乗客の主役はまた高校生に変わる。

桐生駅に着いてから少し遅い昼食を「芭蕉」でいただく。もう五十年近く立ち寄る店だ。妖怪が出てきそうな不思議な店内はますますその感が強くなっている。今日の撮影と共に、この店に寄った五十年の出来事を静かに振り返った。

桐生駅に戻り両毛線に乗るとまたまた高校生の群れ。日常に引き戻される。