■デザインから省エネルギーヘノシフト
先週、平成11年度省エネルギー基準に対応した「仕様規定」による設計・施工に関する講習会があった。
いきなり平成11年度省エネルギー基準ありきの内容で講義が始まる。
要は平成32年度には全住宅を省エネルギー基準を適用させようとする目論みらしい。
さらに新基準の制定の準備が進んでいるようだ。

住宅設計の分野では設計者向け建築雑誌にもあるように相変わらず斬新な(感じの)デザインの住宅がもてはやされている。
一方住宅産業のほうでは着々と省エネルギー住宅へのシフトが進んでいる。

システム的に動いている大手住宅メーカーとは別に、依然として多くの地場工務店等により住宅は建てられている。
そこで国土交通省はこれらの供給者の技術力を高めたいと新たな政策をとる。
国土交通省はもともと零細建設業の淘汰を目論んでいるので、地場の工務店にも厳格な施工を求めてくることは考えられる。

建築主側も、インターネット等で省エネルギー住宅・平成11年度基準等も把握していることは考えられるので、この基準に対応した工事を怠れば工務店側も手痛い傷を負いかねない。

■省エネルギー住宅の歴史
そもそもここでいう省エネルギーとは主に冷暖房費の節約のことだ。
さらに給湯や調理の点まで踏み込んできている。

北海道のように厳寒地において異常な燃料消費という問題がオイルショック以降住宅設計においても課題となってきた。
北海道は温暖な西日本からの移住者も多かったことから暖房設備は同じ寒冷地の本州より早くから普及した。

まず断熱化工事、すなわち建物を布団でくるんでしまおうというところからスタートした。
ところが内部結露により短期間に腐朽するという問題が顕在化する。
そこで結露対策、暖房効率を合わせて、高気密高断熱という概念が確立された。
緯度差が大きい日本とはいえ、逆に温暖化の進行により冷房対策の重要になった。
北方住宅系の対応だけでなく冷房対策も併せて行うというヨーロッパ先進国などとは異質の省エネルギー住宅が出来始めたのだ。

■省エネルギー対策
もっとも群馬においては冷暖房が必要なのは年に半分程度、それ以外の時期は日射調節や通風(自然換気)等を工夫する努力を設計者はしなくてはならない。
その手の及ばない時期にいかに機械力を最小限に済ますかということが省エネ基準による住宅なのだ。

■技術者の知識不足
過去住宅金融公庫の仕様書が長い期間、住宅の設計。施工指針が事実上の住宅建設の基準となってきた。
しかし平成11年度省エネルギー基準は性能表示制度の4ランクとされていても予算の都合などでなかなか実現されていない。
平成11年度基準以上の新基準が出来または、法制化されたりすればコストアップ要因、及び法律違反にまで影響が及ぶともなりかねない。(憶測の域)
今からでも遅くないので早く基準をクリアーできる技術力を備えなくてはと思う。

■仕様規定
基準を「仕様規定」でクリアする場合、工法は実にいろいろある。
基礎断熱か、床断熱か
外壁外張り断熱か、内部充填断熱か
天井断熱か、屋根断熱化か
また繊維状断熱材か、ボード状断熱材か、そしてその材質
気密材は・・・等々とその選択は非常に多くの組み合わせを許容しており、実情に合った工法を自分のものにしておくことが重要だ。

■これから
いずれにせよデザイン云々だけで良かった時代は終わったかのように見える。
住宅を商品のように扱うために性能表示制度なるものだ出来、着々とシェアを伸ばしている。
耐震性はもちろんゆるがせることのできない事項だ。

しかしこの状況下であってもこれらは「必要条件」であっても「充分条件」にはなりえないと考える。
人間の、家族の暮らしを包む空間の質はこれらの」計数だけで表せるものではないのだ。
やはりここにこそ設計者の力量が問われる。
そのために足元をすくわれないよう、我々も省エネルギー基準などを今一度見直し学習しよう。