住宅の耐震設計(木造建築を中心にあつかう)
建築が地震に対して安全であるように設計すること。

■新しい構造設計の動き
地震への安全性の確保には今までは地震に抵抗する構造が用いられてきた。(耐震設計)
最近では構造体で地震の力を吸収する制震構造、土台から上部を切り離し、地震力を軸組構造体に伝えにくくする免震構造等他新しい工法が出現している。

■地盤
建築基準法では過去目視による土質判断が認められ、地盤支持力が求められてきた。
3.11の千葉県を中心とした「液状化現象」をみるにつけ、地盤支持力の重要さが認識されてきた。
群馬県は南半分は利根川水系による堆積物に覆われた軟弱地盤に覆われている。
多くの宅地は地盤の強化が前提となっている。
木造住宅においての瑕疵担保履行法等の整備に伴い、事前に簡易な方法での地盤調査が一般的になってきた。
軟弱な地盤に対しての補強は土質表層改良、柱状改良、鋼管杭、コンクリート杭等がある。

■地震力のとらえ方
地震の多くが横揺れであることから水平方向から外力(圧力)が繰り返しかかることを想定する。
大正時代に許容応力度設計の概念が登場し、昭和25年、建築基準法の制定により水平震度は0.2とされた。
水平方向の重力の加速度として建築の自重の0.2倍の重さが水平方向にそれぞれの床位置にかかると置き換えられてきた。
現在ではこの倍率が一定ではなく条件によって変化するようにとらえられている。
代表的な例は性能表示住宅の等級別に値が変わることなどがあげられる。

■確認申請上の問題。
姉歯事件は建築確認申請の制度上の弱点をさらけ出した。
当時木造住宅にも構造計算の義務付けが検討されたが構造設計の費用の負担を巡って業界団体からの猛反対で沙汰やみになった経緯がある。
いわゆる4号確認においては構造計算書の添付は依然省略されている。
しかし正確な地震力の把握は最低「許容応力度設計」を行わなくてはできない。
建築士はその免許において自身の判断で建築の安全性を検証、保証する立場にあり、安易に法律で規制されていないからといって現行基準の検証で済ますことではその責を果たせないであろう。

■耐震設計の手法(基準法)
長方形の平面の建築に対してそれぞれの方向(南北、又は東西)に水平に地震力が加わると想定する。
地震に対してはもっぱら軸組内に存在する壁が抵抗するものとし、
建築基準法施行令(以下令)46条により仕様により床面積に対する壁量が差が定められている。
壁は9㎝×1.5㎝のすじかいが入っている等の壁を「1」とした基準倍率とし、構造によって0.1から5.0までを規定している。
「1」とは壁長さ1m当たり1.96kN(200㎏相当)の水平荷重(横からの力)に抵抗できることを意味する。
階ごとに床面積を算出し、それに「階の床面積に乗ずる数値」を掛けたものにより必要とする壁の長さを算定する。
壁の構造、仕様により0.1から5.0までを補正し、建物内に配置する。
一方壁配置が不均衡な場合は充分に壁に地震力が伝わららない。このためバランス良く4分の1に分割された領域に配置する。

■水平剛性
兵庫県南部地震において収集されたデータによれば、耐震部材(耐震壁等)の不均衡な配置により、ねじれ倒れる事象が多く見られた。このことをうけて現在は建築の平面を4分の1に分割しそれぞれの領域に耐震部材をバランスよく配置することの検証が手続き上求められている。
しかし抜本的には床面の剛性(固さ)が十分でなければ想定される地震力が均等に各耐震部材に伝達されるとは言い難い。
床面の剛性を検証する必要性を痛感する。

■補強金物
「許容応力度設計」をもとに作られた現行法規は接合部の安全性を補強金物によって担保している。
伝統工法が貫工法など仕口の工夫により安全性を確保しているのとは対照的である。
特にすじかいはトラス的な構造の特性から地震時の様な大入力があった場合柱や梁の接点を破壊する危険性がある。
このことは兵庫県南部地震でも多く見られた。
現代の軸組工法(在来工法)においては補強金物は非常に重要なものといえる。
補強金物は接合部の応力の種類により、各種細かく定められている。
従来のものに加え地震による上部構造の浮き上がりを抑えるためのホールダウン金物等が用いられるようになってきた。

■既存改修
木造住宅の地震への安全性の判断は大地震の度に結果を踏まえ基準が厳しくなり、多くの木造家屋が耐震診断等で不適当とされている。
耐震性調査では南側を開口部を大きく取り、北側の開口部が小さいことによる、剛性の偏心が多く見られた。
古い家屋では床が根太工法であり充分な水平剛性が確保されておらず、ねじれ倒れる危険の原因となっている。
地震時にまず傾いても倒壊させないことが重要であり、部分的な強度が高い筋交いよりも合板による耐力壁のように強度が集中しないような工夫が必要であり壁配置の偏心を補正する。
また古い家屋では基礎が簡易な構造であることが多い。
本格的な伝統工法は別として基礎の補強は充分検討するべきであろう。