前橋からは木曽谷は自動車では気軽に走れる距離ではない。もっと長距離を走ったこともあるが交代要員なしの一人旅では加齢も考えると少し危険。何より日常の生活と切り離しが難しく気分転換も含め列車移動とした。

日曜日の朝、母の一週間分の食品購入の付き添いを済ませ、10時22分のJR両毛線で出発。

高崎から長野まで「あさま635号」、雪で頂きが白く輝く浅間山を見ながら長野に到着。

昼時に着き駅弁を購入。
列車旅らしい雰囲気にご満悦。長野を出て姥捨て山付近には雪が残り、冬間近を感じる。途中松本駅では到着に合わせて「まつもとー、まつもとー」という懐かしい響きのアナウンス。旅気分が盛り上がる。塩尻まで「しなの12号」で移動し、各駅停車のJR東海313系ワンマン列車に乗り換え奈良井に降り立つ。
奈良井からは木曽福島までJR東日本の長野色211系に乗る。
ふたたび「しなの20号」で中津川までもうすっかり暗くなった山間を向かう
予定外の乗車だったので大混雑の名古屋寄り先頭の6号車の運転席後ろのデッキで景色を楽しむ。最も谷底は日が暮れ、運転席の景気が鈍い光を放つのをぼーっと見ていた。JR東海の運転手の指差し確認は腕をいったん耳の後ろから振り下ろす。大げさなようでも確かに指差しをしているといった感じが鉄道員らしくて良い。

運転席には見慣れないディスプレーが運転席右側にあり覗き込んだら自動車のカーナビのように、直線表示ながら信号、駅、橋、トンネルが表示されカーナビのように進行に合わせて画面が変わっていくのだ。
383系特急車両は制御付自然振子方式といって地上のATSからの位置情報と速度をあらかじめ入力された曲線データを組み合わせて傾斜のタイミングと角度を制御するものらしく、そのためのモニターかもしれない。ただし時々ずれる。

それにしてもほとんど直線区間がなく、右へ左へとカーブの連続ながら、山の中をカーブも減速せず,振子機構の威力で突き進んでいく様は豪快でもある。

帰路は妻籠から南木曽まで外国人だらけのバスに乗り、南木曾から一旦「しなの16号」で中津川に戻り、少し時間をつぶす。女子高生の紺のセーラー服がちょっと古風で妙に新鮮に見える。

長野行きの「しなの19号」で長野まで乗車し、「あさま630号」で高崎まで乗車、両毛線に乗って前橋下車。

時刻表を引くのではなく、ネット環境から旅程を組み立てるのがいかにも現代的で、これもそれなりに楽しいがぼーっとしていても移動しているし、景色を楽しむよそ見をしていても安全。何しろ日常から隔離された空間の楽しさを味わう。

AIによる補足
木曽路、乗り鉄紀行 ―注釈付き―
木曽路は、群馬県前橋市からするとちょっとやそっとじゃ行けない距離。もちろんクルマでも行けるが、ひとり運転では長丁場が堪える。しかも、日常の尻尾を引きずってしまう感覚が拭えない。だから今回は、鉄道に全振り。非日常に身を置くという意味でも、列車旅は強い味方だ。

出発は日曜朝。母の買い物という前哨戦を済ませてから、10:22発のJR両毛線に乗車。

■JR両毛線《前橋駅》→《高崎駅》
群馬県の東西を結ぶローカル線。107系が去り、211系が定着。

高崎からは北陸新幹線のE7系「あさま635号」で長野へ。

■北陸新幹線《高崎駅》→《長野駅》
車窓右に名峰・浅間山(2,568m)。この日は雪をかぶり、まさに絶景。

長野に着くと、ホームの売店で駅弁を確保。早くも「旅してる感」がこみあげる。

続いてE353系「しなの12号」で塩尻へ。姨捨駅付近では山肌に残雪。標高551mの姨捨、さすがに冷える。

■篠ノ井線《長野駅》→《塩尻駅》
姥捨駅(標高551m)はスイッチバック駅としても有名。冬の入り口の趣きあり。

松本駅では、あの名調子「まつもとー、まつもとー」の構内放送。耳に残るローカル音が、旅情を底上げする。

■松本駅:旧国鉄特急「あずさ」・「しなの」の分岐点。城下町の風情も残る。

塩尻からは313系ワンマンで奈良井へ。

■中央西線《塩尻駅》→《奈良井駅》
国鉄時代からの風情を残す木造駅舎。奈良井宿は中山道随一の宿場町。

ここからは、境界駅を挟みJR東日本の211系(長野色)に乗車し、木曽福島へ。

■奈良井→《木曽福島駅》
ここがJR東海とJR東日本の境界。長野色の211系は今や貴重。

夜の帳が下りてきたところで、再び「しなの20号」で中津川へ。すでに山中は真っ暗。混雑のため先頭車(6号車)のデッキに立ち、運転席後ろからのぞく。

■特急「しなの20号」《木曽福島駅》→《中津川駅》
383系は制御付き自然振子車両。ATS地上子とカーブ情報で傾斜制御。

運転士のダイナミックな指差喚呼が目を引く。腕を耳の後ろまで引いてから大きく振り下ろす。車内の運転表示モニターも興味深い。カーナビ的なインターフェースで、信号や橋、駅名、トンネルの情報がタイムラインで表示されていく。乗り鉄にとってはご褒美のようなシーンだ。

翌日は、妻籠宿から南木曽へ。観光バスは外国人旅行者でいっぱい。

■南木曽駅:中山道・妻籠宿の最寄り駅。駅舎には木曽檜が多用されている。

南木曽からは再び「しなの16号」で中津川へ。ローカル駅で時間をつぶすなか、通学途中の女子高生の制服(紺のセーラー)が妙に懐かしい。

■中津川駅:岐阜県最東端。栗きんとんで有名。

再度、「しなの19号」で長野へ戻る。

■「しなの19号」《中津川駅》→《長野駅》
383系の振子をもう一度楽しめる区間。

長野からは再びE7系「あさま630号」で高崎、そして両毛線で前橋へと帰還。

■「あさま630号」《長野駅》→《高崎駅》→《前橋駅》