二月は「如月」とも呼ばれる。寒さはいよいよ厳しさを増す一方で、日差しにはどこか春の気配が感じられるようになった。
月替わり最初の日曜日、上信電鉄の風景を撮りに下仁田を訪れた。
下仁田は鏑川上流に位置する小さな町だが、かつては姫街道(碓氷峠を経て中山道に至る脇往還)の要衝にあたり、養蚕業や、近年ではこんにゃく加工・下仁田ネギの集荷地として栄えた歴史をもつ。現在でも、営業の有無はともかく、駅周辺に宿屋の看板が残り、往時の面影をわずかに伝えている。
「上信電鉄」という社名は、内山峠を越えて佐久方面へ延伸する計画があったことに由来するが、実際には下仁田が終着となった。沿線にはかつて鉱山が点在し、その名残で下仁田駅の構内は意外なほど広い。しかし現在は駅周辺の再開発が進み、構内全体が工事用仮囲いに覆われ、撮影の目論見は大きく外れてしまった。駅舎の完成予想図を見る限り、既存の姿はほとんど留めないようである。建築に携わる者としては、構造補強を前提とした部分的保存という選択肢もあったのではないかと、つい考えてしまう。単なる感傷かもしれないが、既存の時間を受け継ぐ価値は小さくない。

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「きさらぎ駅」という映画がある。そのロケ地となったのは上田電鉄の八木沢駅で、おそらく開業当初から大きな改築を経ていない小駅である。風雪に耐えた木造駅舎は現在も健在で、そこには時間の堆積がわかりやすく表れている。こうした建物の前に立つと、移動時間とは異なるもう一つの「時間」が流れているように感じる。これを単なる感傷と片付けてよいものか、少し考えさせられる。
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