今朝はめっきり冷え込み、赤城山の頂も白く煙っていた。冬である。
帰宅してひと息つくと、無性にレコードを聴きたくなり、季節に合わせてイ・ムジチ合奏団の《四季》を取り出した。

手元の盤は古い。ジャケットの解説文には「1960年秋の録音」と記されている。イ・ムジチの《四季》は初期から幾度か録音が重ねられてきたが、この盤はまだステレオの黎明期にあたる時期のものである。私が入手したのは1970年前後だったと思うが、この録音をきっかけにバロック音楽に親しみを覚えた方は少なくないだろう。

《四季》は映画やドラマにもたびたび使われてきた。記憶に残るもののひとつに、1971年のNHKテレビドラマ、原田康子『挽歌』の映像がある。
『挽歌』は、建築技師を主要人物に据えた点でも当時は珍しく、建築系の雑誌で紹介されていたのをきっかけに手に取った。舞台は北海道・釧路。ダイヤモンドダスト、花冷え――その冷たい光を帯びた語彙にも惹かれた。

とはいえ、若かった当時の私には、兵頭玲子(木村夏江)と桂木節雄(佐藤慶)、そして彼らを取り巻く感情の揺らぎや狂気を受け止めるには、いささか時期尚早だったのだろう。

静かな冬の夜である。久しぶりにカートリッジを GRACE の F-8L に換装し、その繊細な音色に耳を澄ませる。ターンテーブルの上で雪明かりのように光る針先を眺めながら、北海道の冬景色をふと思い浮かべた。