赤沢森林鉄道のある森が紅葉の終わりを告げているという情報を得て、平日ながら公休日を使い列車で向かうことにした。
自動車でも行けない距離ではないが、年齢を考えれば無理はできない。列車の時刻をいろいろ調べ、12時には到着できるように早朝の前橋駅へ向かう。

いつも通勤時は211系だが、今日は国府津行きのE233系(たぶん)。
ただし高崎駅ですぐ降り、新幹線下り線ホームへ。東京方面へ向かう乗客の列を見ながら、休日であることを実感する。ちょっとした優越感だ。

到着した「あさま601号」からは、8時前だというのに大勢の乗客が下りてくる。おかげで車内はがら空き。

初冠雪のあった浅間山は、すっかり雪が解けていた。やはりまだ秋である。

長野駅で下車。ホームに漂うそばつゆの香りに誘われて、思わず駅そばへ。旅情をかき立てられる。

「特急しなの6号」の車両はJR東海の383系。関東では見られない形式で、見知らぬ土地に向かう期待感を抱かせてくれる。
在来線特急のほうが「旅」を感じさせてくれるのは不思議だ。

今回はもう一つ味わいたいものがあった。松本駅の構内放送である。
なんと今月で終了との情報を知り、聞き逃すわけにはいかない。女性アナウンサーの独特の抑揚――前回の妻籠への旅行の際に気づいたものだ。
いわゆる“音鉄”をやってしまった。


なんでも、このアナログ放送がデジタル化で廃止されるという。本物の人声の温かみがあって、これまた旅気分を盛り立ててくれた。

JR東海の運転士による指差喚呼は、メリハリのある大きな所作がいかにも鉄道らしくて好きだ。
先頭車まで歩き、前方を一緒に見つめる。

10時30分、木曽福島で下車。赤沢行きのバスを待つ。
乗り継ぎのたびに一休み。このリズムにだんだんと慣れていく。自動車ではこうはいかない。

赤沢までは約45分。そのうち半分近くが林道であるにもかかわらず、大型バスが通る。すれ違いも大変そうだ。
切り出した木材の搬出もさぞかし苦労があっただろうと想像する。

川沿いの道は紅葉の見ごろ。期待が高まる。
しかし次第に針葉樹の黒い森へ――当然のことだ。なにしろ、これから森林鉄道に乗りに行くのだから。