手元にあるこの本はこの度逝去された故「日向規夫」さんより頂いたものだ。
高校に入学と同時に「美術部」を部活に選び、まだ旧中島飛行機の木造工場を使用していた部室で初めてお目にかかった。
2年上級である。日本画家の「日向徹夫」を親に持つということから画風は日本画的な傾向を持ちながら明るい油彩画であったと思う。
卒業される際に「小見辰男」先生をご紹介いただき絵画の勉強を続ける道を作ってくださった。仕事が忙しくなって以降絵筆を持つことはなくなってしまったが、また描いてみたいと思う。

卒業後も悪友とともによく日吉町のアパートにお邪魔した。酒を覚えたのもあのアパートであった。随分と社会勉強もさせていただいた。
「男子百勝」という本は25歳ころ、フラフラ生き方が定まらない私を見かねて与えてくださったものだ。
もっとも日向規夫さん自身色々と悩みが多かった頃でもある。しかし一本気な性格をを貫き通されたと思う。

幾つかの仕事を経てゼネコンの現場監督の地位を得て順調に過ごされ退職後もご健在だとばかり思っていた。
ご自宅設計の依頼を受けたり、偶然仕事上で設計監理者と現場監督として出会い、仕事をご一緒することが出来た。真面目な性格そのままの仕事ぶりであった。
暖かくなったらご自宅を訪ねてみようと思っていた矢先の訃報である。

実に50年に渡り、ほぼ同じ時代を生きてきた。そして多くのことを教えていただき、喜怒哀楽もともにさせていただいた先輩を失うというのは悲しさというより心細さを感じる。寂しいものだ。「男子百勝」を読み返してみよう。