オフグリッド 聞きなれない言葉だが電力会社より電力の供給を受けない、つまり電気料金がかからない仕組みを言う。
福島第一原発の事故を受け、原子力発電廃止を口にするの容易い。しかし電気漬けの生活を送る者がどうしたらよいか解決の糸口を探すのは容易ではない。
この解決方法の一つが自然エネルギーのみで生活することであるがその実験的な建物の発表会があったので拝見に伺った。

設計者はJIA住宅部会で日頃お世話になっているアトリエ六曜舎の湯浅剛さんだ。建築士事務所を営む傍ら一般社団法人 えねこやという一般社団法人を立ち上げ、自然共生、低炭素、循環型の持続可能な地域社会作りを目指している。

場所は深大寺ほど近い郊外の住宅地の中にある。遠くからでも片流の屋根に太陽光発電設備や太陽熱温水器が乗っているのですぐわかる。しかし深緑に塗装された木製の外壁は非常に優しい雰囲気を作り出している。インテリアは奇をてらったところはないが自然素材を巧みに組み合わせ、環境問題を重視しつつ頭でっかちではないデザインが行き届いている。湯浅さんが建築を取り巻く今日的状況をよく理解され、模範的な回答の内容だ。

自然エネルギーを取り入れるための仕掛けは決して大袈裟なものではなく、手作り的な感覚で一つ一つ解決されている。
HEMSや各種計測機械類で省エネルギー化や温熱環境を科学的に研究しながら建築本来の愉しさも併せ持つことが一層魅力ある建物にしている。
完成したお話は以前からお聞きしていたが実際の空間を体験し改めて感じた湯浅さんの意志の強さを建築共々大いに刺激を受けた。