午前中、現場巡視。
内装工事が進む住宅の現場を訪れる。
この住宅の和室は吉野杉の芯材の赤い部分の節がない良材で作られている。

優しい色合いとやわらかい質感、そして香りが魅力的な貴重な材料である。
関東では桧が好まれるが住宅ではやはり杉のほうが役者が上であろう。
但し無垢材であり扱いには細心の注意が必要だ。

今、木造と行っても輸入材の木材を壁の中に包む「大壁工法」と言われるものが主流だ。
さらに骨格を製材工場のNC機械によるプレカットと言われる加工が主流で大工さんの腕の見せどころが少なくなった。
この住宅も基本的に骨格はプレカットによっているものの和室のように柱などが露出する「真壁構法」は大工さんの腕と木材の素材の魅力が存分に発揮される部分だ。

多くの建築主は木目印刷でラッピングされたものを「木」と捉えている。
大メーカーの大多数は天然材のリスク「ひび割れ、ソリ、汚れ」などクレーム要素を排除するため天然木材を使用しないのだ。
身近な材料の本当の良さを是非体験していただきたいものだ。

「匠」の選ぶ大改造劇的ビフォーアフター2014年大賞に熊本の古川保さんの番組が選ばれた。
この大賞は今年参加した16人の設計者の互選によって決定する。16本のDVDを連続で見るのは大変な苦行であったが得られたものも多い。
TV番組に求められる視聴率に代表されるポピュリズムの期待を受け止めながら、其々日頃実践されているアイデアが遺憾なく発揮されていた。

特に古川保さんの仕事は日頃に設計姿勢を貫きながら、誰にも共感を与える決めの細かい日本建築の伝統を大切にした素晴らしい内容であった。
古川保さんのお名前を知ったのは「水俣エコハウス」であった。
全国規模で行われた2010年の21世紀環境共生住宅コンペで当選し、熊本県水俣市に建てられたのを知った時だった。
機会を作ってぜひ拝見したい建築である。

他の多くの当選案が高気密高断熱により力技で省エネを達成しようとしているのに対し、自然との直接的ふれあいで対抗する真っ向勝負した作品だった。古川保さんのホームページを久しぶりに拝見して、氏の熱い思いを垣間見ることが出来た。

とにかくTV番組とはいえ、日頃の建築に対する思いを貫かれたことに拍手をおくりたい。