5月24、25日、岡谷市を中心にJIA支部保存問題長野大会が開かれた。
さる2月の大雪に開催が重なり、延期されていたものだ。準備に当たられた地元長野県クラブのご苦労が報われることになった。
JIA地域会の中で唯一「県クラブ」の文字を入れていることからも独立心旺盛な長野県人のプライドの高さを感じさせる。


レセプションでは久しぶり由緒正しい大宴会を設営くださり、久しぶりに合う顔ぶれも多く楽しいひと時を過ごすことができた。

今、建築の更新が歴史的な価値に関わりなく進められることとによって建築の文脈が絶たれ、建築文化の継承に支障が出ている。
JIAの活動としてこの問題を問う行動を行っている。
とはいっても建築主の求めに応じて建築の設計する立場から、内部でも意見統一は難しい問題でもある。

長野県クラブは過去2回大会を開いているがその間県内隈なく保存を期待する建築の把握を続けており、今回このデータが発表された。
この内容は建築家の視線から選んだものとはいえ踏査は大変な時間を費やしたものと拝察した。そして喪失したものも少なく無いと報告された。
この活動は支部全体でも行われるべきことであり、記録保存を含め、地道な努力が求められる。


岡谷市を始め長野県は群馬県とともには生糸の生産地として日本の近代化を支えた。その遺構は今も健在なものもあり片倉館のように当時の厚生施設が現役で活躍している。


かつての本社は印刷工場として登録文化財に指定されて保全されている。
規模からすれば平凡なものであるから鉄骨造ALC版にでも建て替えてしまえば誰からも見向きもされないだろうが片倉の歴史を背負うことでその企業価値まで高めている。
このへんが建築の保存活用の妙であろう。


片倉家の旧宅も公開されているので拝見したが質素でありながらきちんをした佇まいである。


旧市役所庁舎は消防庁舎として現役であるがスクラッチタイルが懐かしい立派な建築である。

25日には藤森照信先生の基調講演、及びシンポジュームが行われた。
先生のお話はいつも通り歯切れのよい楽しい内容であった
「東京駅は今カメラを向ける人たちに取り囲まれているがガラス張りの高層オフィス群に向けける人は少ない。」との発言。大変示唆に富んでいる。
ガラス張りの高層オフィス群は将来カメラを向けられる対象となりえるのだろうか。

締めくくりは川上前長野県クラブ代表の呼びかけで「ふるさと」の大合唱となる。
作詞の高野辰之は長野県出身でその歌詞を読むと長野県の田園、里山の様子が浮かんでくる。
ふるさと、身の回りの環境を大切にするということ、これが本大会テーマ「保存は未来への創造である」ことの原点であろう。