前触れが賑やかだった台風14号は群馬県にさしたる被害もなく通り過ぎていってしまった。ここのところ、前橋が被害をうけることはほとんど記憶にない。群馬県で台風といえば昭和22年のカスリーン台風の被害がよく引き合いに出される。米軍占領下では台風に英語表記が記録された。その後の調査研究では赤城山を中心とした土石流発生の原因の一つに森林の乱伐、足尾銅山の鉱毒による枯死により山の保水力の低下が挙げられている。

今、円高、コロナ禍、戦争と言った外的要因で木材価格が高騰している。一方、柱材としてはすでに切りどきを逃した杉が採算が合わないことなどから山に放置されてきたがここに来て急に伐採が始まったように見られる。無秩序に伐採を続ければ伐採後の幼木は成長するまで時間がかかるし、その間台風や集中豪雨があればかつてと同じような被害を出す可能性がある。皮肉なもので地元の小さな林業家では伐採できる量も限られているが、CLTなど大断面など、大規模建築のために大資本が手を出せばあっという間にはげ山になってしまう。経済の論理だけで環境を破壊されたくはないものだ。