群馬県民会館を解体すると群馬県から発表になっているようだ。この会館は明治100年を記念した事業として誕生した。
図面を初めてみたのは高校3年の時に舞台美術の有識者として委嘱されていた小見辰男先生のアトリエだった。当時はCADなどない時代、それでも素晴らしくきれいに清書された図面は目を見張るものだったのを記憶している。
就職後職場が旧群馬大学学芸学部の敷地のすぐ南にあり、すでに荒牧地区に移転後だったがキャンパスで昼休みにキャッチボールなどで過ごした。やがて旧校舎の解体が始まり大掛かりな工事が始まった。

設計者の岡田新一は同時期に最高裁判所庁舎の設計も行っており、意匠上の共通点も多いとされている。
明治100年記念事業として永遠性を強く意識して、外装には国産の稲田白御影がふんだんに使用されている。インテリアも骨太で重厚感を持ちつつ近代的な造形で構成されている。
但し、記念性を重視したため東京文化会館のような華やかさに欠ける。昨今の軽薄で貧弱な建物とも違う。現代との時代の齟齬は感じるところだ。

とはいうものの明治100年を記念するという趣旨からすれば維持に金がかかるという理由であっさり解体するというのは腑に落ちない。日本古来の建築も創建当時のまま残っているわけではなく、手入れを重ねて維持されてきた。
文化という側面も見逃せない。文化としての建築評価がなされているだろうか。この点は日本建築学会や日本建築家協会の評価がぜひ欲しいところだ。

前橋地区からはもちろん改修して維持を願う声が上がっているが市長はあまり積極的に考えていないようで民間のほうが先行している。
前橋市も費用を負担すべきだという声もあるがこの建物は前橋市のためのものではなく、あくまで群馬県全体のものである。首長が変わったからといって過去の経緯は関知しないというような姿勢は彼の国の大統領の様で情けない。
前橋地区の住民も前橋市中心にアピールするだけではなく群馬県全体の問題だという認識を持たないと群馬県側の意思を変えることはできないであろう。