12月7日から9日にかけて九州の建築見学研修に参加した。三日間ともほぼ晴天で、季節外れの温かさを感じるほどだった。光量は十分すぎるほどで、外壁の白漆喰や石材の反射が強く、明度差の大きい環境にどう対応するかが課題となった。こうした条件下では、逆にレンズの素性がよく見える。
携行したのは、9月発売の新レンズ 20-200mm F3.5-6.3 DG Contemporary のみ。DxO PhotoLab の光学モジュールは未対応だが、RAW 現像前提の検証としてはむしろ好都合だった。レンズがどれだけ素直に光を受け止めるか、そのまま確認できるからである。
建築撮影では、20mmという広角側の数ミリが構図を決定づける。敷地境界の近い近代建築では後退距離が取れず、晴天下の強い影が落ちる状況では、広角の自由度が被写体の読み取りを助ける。一方で、屋根の納まりや装飾の細部を追う場面では、200mm域が実に有効だった。建築の“全体”と“部分”を一本のレンズで行き来できる利点は、移動の多い旅程では特に大きい。
晴天ゆえに露出設定は慎重を要した。白漆喰や金属部材が強くハイライトを拾うため、外部では F11・1/250秒 を基準とし、ヒストグラムを確認しながら微調整した。内部は自然光の残響を読みつつ F8・1/60秒 に落ち着いた。α7 IV の高感度耐性が、設定の幅を確保してくれる点は心強かった。
三日間で800枚を超えるカットのうち、いくつかを現像してみると、このレンズの描写傾向が明瞭に現れた。強い日差しにもかかわらず、石材の肌理や鋳鉄装飾の陰影が破綻せず、拡大しても線の粘りが残っている。高倍率ズームにありがちな周辺部の甘さも少なく、素直で健全な光学設計を感じさせる。
デジタルの時代になっても、建築撮影は光と素材と距離の関係性を読み解く作業であることに変わりはない。今回の晴天下の条件は、20-200mm のポテンシャルを実地で確かめるには最適だった。旅行を伴う建築記録では、一本で広角から望遠までを確保できるこのレンズが、今後も有力な選択肢となるだろう。DxO モジュールが提供されれば、ワークフローはさらに整うはずだ。
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