L-26の原型回帰
長年使い続けているスピーカーは、いまから半世紀前に手に入れたJBLのL-26である。
このモデルの高音ユニットには、もともとコーンの外周にスポンジ状の吸音材が貼られていた。ところが当時は、それがどうにも安っぽく見え、若気の至りで取り去ってしまった。
あれから五十余年。古いオーディオ機器が再び脚光を浴びるようになり、私の中でも原型への回帰心がふつふつと湧き上がってきた。失われた部品を探してみると、インターネットの世界は広大で、思いのほか簡単に見つかった。製造は中国とのこと。とはいえ、直径105ミリほどの単純なドーナツ形状のスポンジである。寸法さえ合えばよしとした。
低音ユニットはすでに二度エッジを張り替えている。前回の作業からかなりの年月が経過したため、恐る恐るネットグリルを外した。
このスピーカー・ボックスは構造が実に単純で、すべてのユニットが前面から取り付けられている。入力端子はすでに痛み、配線も怪しげだが、それでもなんとか音は通っている。
取り付けを終え、早速試聴してみた。音質が向上したかどうかは即断できない。ただ、最新のハイレゾ音源を再生しても、意外なほど違和感がない。経年劣化もまた、このスピーカーと同じ時間を歩んできた私の耳との共同作業なのだろう。
それにしても、五十年を超える機材であっても補修部品が手に入るというのは、なんともありがたいことである。もっとも、それが今や日本製ではなく中国製というあたりに、少しばかり複雑な思いを抱かざるを得ない。
届いたパッケージには「LE-25~LE-25-6対応」と記されており、このユニットが長い期間にわたって改良を重ねつつ使われてきたことを物語っている。
時を味方につけながら音を鳴らす――そんな遊びこそ、古いオーディオの醍醐味である。半世紀を経てもなお、ジムランのL-26は確かに“生きて”いる。
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