旅行の画像を整理していたら煉瓦を映した画像がいくつか出てきた。煉瓦は日本では明治期から関東大震災までが最盛期ながら出自によってさまざまな表情を見せてくれる。

製法は粘土を1200度程度の温度で焼成して作るので土の焼けた色をしている。産地によっても焼成温度によっても異なる色調となる。現JISでは210X100X60ミリが標準だが輸入元によって少しずつ違ったようだ。この寸法は長手に対し直角方向に2枚積むと厚さ210ミリの煉瓦の壁体になることが基準になっている。もちろん大規模になればさらに厚くなる。

似ているものに煉瓦タイルや磁器タイル、炻器質タイルがありこちらは227x60や108x60が基準となっていてモルタル等で張り付ける単なる仕上げ材料だが一般には煉瓦とあまり区別しないで煉瓦と呼称されることが多い。煉瓦の210x60を長手として、100x60を小口とするとイギリス積は一段ごとに長手、小口を繰り返すのに対し、フランドル積では一段ごとにに長手、小口を繰り返す積み方だ。

イギリス積(海軍兵学校生徒館)

フランドル積 (旧官営富岡製糸場)

江戸末期に徳川幕府はフランスから軍隊システムを導入したので限られたところに散見されるが英国の影響が強くなった明治期以降はイギリス積が主流となる。ただし富岡官営製糸場のように絹糸機械製糸プラントをフランスから輸入したのでフランス式の建築となっていて窓の丁番も無骨ながらフランス丁番で当然積み方はフランドル積である。

海軍兵学校生徒館

日本海軍はイギリスに範を求めたので当然イギリス積で、その代表格は江田島の海軍兵学校校舎である。製法そのものは単純なのでその後日本各地にレンガ工場が建てられた。

東京中央停車場

鉄道は本州以南においてはイギリス、北海道はアメリカとそれぞれ異なるものの積み方はイギリス積となる。

碓氷第三橋梁

これらを念頭に旅先で煉瓦造の壁を見ていくと、時代背景を感じることができ、また楽しいものだ。