宮沢賢治の銀河鉄道にも関係が深いJR釜石線の遠野駅の改築の話が本格化しているらしい。釜石線は花巻と釜石を北上山地を横断して走るローカル線である。一日上下線合わせて24本程度の運行密度である。

遠野は3度訪れているが最初何の先入観も持たず駅に降り立ったとき、地方都市にな不釣り合いな重厚な駅舎に遠野という歴史都市の位置付けを感じたものだ。

千葉家住宅をはじめとする南部曲り家の保存家屋が所在することでも知られ、柳田国男の「遠野物語」の世界があるし、宮沢賢治ともゆかりの鉄道である。
花巻と釜石の中間の遠野地方の中心地のシンボルとしてなんとか存続できないものかと遠くから願っている。

一方、古い建物を保存、維持していくことはそう容易いことではない。消失する大きな理由は「安全性」が挙げられる。東北地方を襲った大震災の記憶がまだ生々しい東北地方にあってはことされである。しかし修復技術は確実に進歩している。これらは技術的に解決可能だ。また「経済性」を上げる人達もいる。何も古いものに今更お金をかけてどうするのだという考え方だ。しかし時代はスクラップアンドビルドから完全にリノベーションにシフトしてきた。新築の建築が許されるのは高品質のサスティナブル機能を満たしたものに限られていくだろう。新築するものの責任としてもはや中途半端な建築は許されないのだ。
このような時代背景からすればやはり一歩立ち止まって古い建築の価値を改めて検証する必要がある。一度壊してしまったら再現不可能な物の価値を様々な角度から検討する。このような姿勢が今求められている。

私の地元でも惜しまれつつ解体されていた煥乎堂書店(白井晟一設計)や明治大正期の代表的な赤レンガ倉庫などを見送った。

建築に関わる専門家といえる建築士は少なくとも建築の価値を理解する、できる立場にいるはずだが私自身生業の中の埋没しているのも事実だ。今回遠野駅の地元で声を上げた方々にはぜひ頑張って欲しいと思う。