住宅支援機構のセミナーの講師として横堀将之所長と共にフラット35にちなんだ話をする。
フラット35という住宅建設融資制度は住宅金融公庫が発足以来続けられた工事仕様書によって支えられている。
まだ社会に出る前に高校の教科書として採用されていた。なじみ深いものである。

昭和25年というまだ日本が占領下にあった時代のことである。街中には焼け跡にバラックが立ち並んでいたなかで良質な住宅を持ち家とするために生まれた。
建築基準法と共に日本の住宅の基本となってきた。戦争で多くの優秀な技能者が戦地から帰ってって来なかった。住宅を大量に供給するためには標準化もやむえなかったが日本建築学会のJASS仕様書の中程度の仕様である。一方で高度な技能を必要とする上等な普請が廃れてしまった。

東急池上線、久が原駅近くに昭和のくらし博物館がある。
昭和26年に建設された住宅金融公庫融資工事の登録文化財である。

実にかわいい住宅である。必見の価値ありである。なにか明るい未来が待っているかのような懐かしさ。
64年の時間が流れている。人の営みの愛おしさを感じさせてくれる。

セミナーでは実作4棟を家人が寛いでいる様子の画像を中心に話をした。
竣工写真には建築のみを記録することが多いが生活感がでて本来の住宅の姿を表すことが出来た。
建築設計の楽しさと難しさを改めて感じる。