旧官営富岡製糸場が 世界文化遺産に登録決定した。
江戸末期から昭和に至る絹生糸の輸出が日本の近代化を支えたと言われている。
なかでも群馬が果たした役割は種から撚糸まで非常に大きく、昭和40年代までその面影を残していた。
その一つの象徴が富岡製糸場であり、群馬県人として誇らしいものである。

フランスからのプラント輸出の形で作られたことにより日本国内では数少ないフランス式の建築群が多く残っていることも特徴の一つだ。
レンガの積み方もイギリス積みの実直な感じより洒脱に見える。
とにかく大きな工場がまるごと原型をとどめていることは特筆に値する。

世界文化遺産登録はこれらを後世まで保全する義務を負うことである。

2.11豪雪ではこの施設も大きな被害を受けているが修復には至っていない。
もともと城郭のように頑丈な建築ではない。現在の構造設計から見ると疑問点だらけの建築である。
さらに木造の性質上腐朽も問題もつきまとう。
富岡市に寄贈され様々な保護の手が差し延べられると思うが今後どのように管理していくのか、課題は多い。
片倉工業のような私企業によって守られてきたことも奇跡に近い。
地元群馬県はもちろん、日本全体で保存する責任を負うことになったとも言える。

今はお祝いムードだが、決して浦安のようなアトラクションの施設ではない。
静止した工場群である。観光施設ではないのだ。
改めて冷静にもう一度世界文化遺産とどう関わり合おうとするのか考えたい。