
久保医院(本庄市栗崎)の主体工事が終わり昨日施工会社から引き渡された。
この医院の特徴は3.11の影響を強く受けていることだ。
3.11は自然とのあり方についての見直し、そして人と人とのつながりの見直しを促した。
限り有る資源を大事にすること。
原発事故は湯水のように使ってきた電気というものが極めて高価であること。また不安定なエネルギーであることを思い知らせた。
安易に原発再開を叫ぶ経済界の近視眼的な視野には呆れるばかりである。
一向に解決の目処が立たないどころではなく崩壊が進む福島第一原発につぎ込まれる負担をどのようにコスト計上しているのであろうか。
計画停電というかつてない事態を我々は経験した。
顕在化しないが弱者である罹患者に停電による負担により犠牲者も出たものと考えられる。
久保先生はこれらを踏まえ、診療活動の安定的継続のための電力バックアップを目的に太陽光発電システムの導入を決定された。
太陽光発電は売電による利益のことばかり話題になりこのような視点で導入される方は少ない。
太陽光発電は蓄電設備都の組み合わせで電力の備蓄が可能になるがまだまだ開発途上の技術である。
今回は接続は見送られたがスマートシティー構想の一翼になり得る発電量は今後の発展性を秘めている。
ゼロ・エミッションのためには太陽光発電設備を設けるだけではなく電気を使わない工夫も欠かせない。
省エネルギーのためにはまず医院として欠かせない冷暖房負荷の低減を避けては通れない。
事業系の建物ではまだまだ初期投資を抑えるため断熱性能等は低いレベルにとどまっている。
木造であることあり住宅の「次世代省エネ」レベルの性能をもたせることで冷暖房エネルギー削減を図った。
また壁面緑化など古来から行われてきた省エネの仕組みも取り入れられている。
華美な建築が一方ではもてはやされているなか、この建物のように質実剛健な素直な建築が
3.11以降の新しい環境作りに積極的な建築主に受け入れられたことは幸福なことであった。
震災は同時に人と人との関係性の見直しを迫った。
今回のプロジェクトには各方面多数の方々が関与した。
その多くは久保先生方の直接面識のある方々によるところが多い。
計画の初期には情報化社会をふまえ、より多くの範囲との連携も検討されたが顔の見える関係での絆の深さを改めて感じている。
このようにこれからの社会、地域、環境、といった命題に正面から向かい合ってこの医院は建設された。
建築設計の分野においてもあらためて3.11以降の社会との向き合い方が問われている。
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